自由律俳句カフェ

自由律俳人さいとうこうによるブログです。

湖灯

先日、結社の大先輩から「湖灯」という句集をいただきました。
昭和期に「海紅」、「青い地球」で活躍された長岡まなぶさん(1929~1986)の遺句集です。

どれも素晴らしい句ばかりで長岡まなぶという俳人の力量に圧倒されました。
一部ご紹介いたします。


屠殺される馬でしょう大きな目で人を見て行く

ひと筋源氏螢とばし湖に蓋する

あかぎれと運命線がつぶす胡麻せんべい

くらしの充血ぼた雪顔のくぼみを埋める

百人の敵をつくりかっこと鳴くも結構


ここで問題は、「長岡まなぶ」とネット検索しても1件もヒットしないことです。
恥ずかしながら私も先輩から教えていただくまでこの俳人を知りませんでした。

こういう歴史に埋もれてしまった優れた俳人がまだまだたくさんいるのでしょう。

「湖灯」を教えてくださった先輩に感謝すると同時に、今を生きる我々の責任とは何かを突き付けられた気がしました。

知り、そして伝える。

海紅には時の流れに埋もれさせてはならない俳人がたくさんいます。
そういった俳人をしっかりと後世へ語り継いでいかねばなりません。


今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。

 

f:id:freeversehaiku:20200906233249j:plain

湖灯

 

海紅令和二年八月号

先日届いた海紅八月号。
私が特に感動した句はこちらです。


街角にすれちがう夏の白いブラウス   渥美 ゆかり
→白いブラウスが爽やかで暑い季節の一幅の清涼剤のようです。

はつなつの老人のかぁんとベンチに   大迫 秀雪
ごびゅるびっと飲む水の やまい克服しお元気で   〃
→絶妙な擬音に人間の生命力が凝縮されています。

目薬さす天井の節と目が合った   小籔 幸子
→一瞬の中にも「動」と「静」があり「詩」があります。

上がりきった立葵が首かしげた   田中 耕司
→首をかしげる立葵が立体的に浮かび上がってきます。

田植えも済んだ白鷺一羽今日も同じ場所   中村 加代
→昨日も同じ場所だったと作者は知っています。
日々を鋭く観察する俳人の眼に脱帽です。

うぐいすの鳴き真似の背につづく   正木 かおる
→作者と「背の人」との関係が微笑ましく癒されました。


今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。

 

f:id:freeversehaiku:20200822122009j:plain

海紅令和二年八月号

 

第54回原爆忌全国俳句大会の選句

先日届いた原爆忌全国俳句大会の献句集の中から20句を選句しました。

私は去年の53回大会から献句させていただいており、今年も4句を献句しています。
53回大会では大会賞をいただき、京都の立命館大学で行われた表彰式に行ってきました。
あれからもうすぐ1年。。
月日が経つのは本当に早いですね。。

コロナ禍のため今年の大会行事は残念ながら中止となりましたが、それでも455句もの献句が集まりました。
どの句も戦争に対する作者の痛切な想いが込められており、いつもの選句の何倍も気力を使います。
魂のこもった生々しい句の数々にこちらも真剣をもって選に取り組みます。

大会行事は中止となりましたが、第54回大会も読み手の心を揺さぶる名句がたくさんありました。

今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。

f:id:freeversehaiku:20200817000301j:plain

献句集

 

箸置き

すこし前の話になりますが、かっぱ橋で箸置きを買いました。
かっぱ橋は浅草にある調理器具などを扱う大きな問屋街です)

ホットサンドメーカーを買いに行ったのですが、
ふらりと入った調理雑貨のお店に素敵な箸置きがあり衝動買いしてしまいました。

コレクターというほどではありませんが、気に入った箸置きを見つけるとちょくちょく買っています。
今では箸よりも箸置きの方が多くなっている始末です(苦笑)

何気なく箸置きがあってそこにお箸をのせる。
それだけで食卓がパッと明るくなります。
それに箸置き単体でみても、また良いんですよ。
遊び心があって可愛いものが多く、一つのオブジェとしても見応えがあります。

箸置きは機能性と芸術性、この相反する性質を見事に両立していると思うのです。

ちょっとしたお出かけや旅先で、これからも素敵な箸置きを見つけてみたいと思っています。

 

今年の春に作った箸置きの句です。


陽ざしは春キャベツ今日はネコの箸置きをならべ   こう


今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。

 

f:id:freeversehaiku:20200727224910j:plain

椿と蓮根の箸置き

 

自由律俳句協会奨励賞の選定委員

先日、自由律俳句協会の役員会がありました。
久しぶりに役員の皆さんにお会いでき嬉しさも一入でしたが、
その席で自由律俳句協会奨励賞の選定委員を任されることになりました。

自由律俳句協会奨励賞は、

「自由律俳句俳句に大きく寄与している」
あるいは
「その活動が自由律俳句に今後大きく寄与すると思われる」

個人または団体が対象となります。

他の選定委員の方々は句歴何十年のベテランの方ばかりで、
私なんぞが末席を汚してしまっていけないと何度も辞退申し上げたのですが、
佐瀬会長曰く、

「ベテランでは気が付かない、若い人の目線から意見を言って欲しい」

とのこと。

どこまでお役に立てるか分かりませんが、まずは情報収集からですね。
少しでもお役に立てるよう頑張りたいと思っています。


今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。

第24回自由律俳句フォーラム

毎年春と秋の年二回、「自由律俳句フォーラム」というイベントが開催されています。
事前に句を募集し、互選の結果、上位入賞者(1位~3位)には賞金が出ます。
コロナ禍のため今回のフォーラムは句会がありませんでしたが、先日選句結果のみメールにて配信されました。

第24回を数える今回の自由律俳句フォーラムは、題詠「桜」と自由詠でそれぞれ一句ずつの募集でした。

私の句と結果は下記のとおりでした。


●題詠「桜」:10位(全44句)

フランスパンにゅっと待ってる桜並木


●自由詠:5位(全44句)

いちにちを生きてひらく花柄の日記帳

 

個人的に順位云々はどうでもよい話ですが、評をいただけるのは大変ありがたいものです。
少しご紹介します。


題詠句
「フランスパンと桜並木がいいです。にゅっと待ってるも動くがあり、春らしさがあり良いです」
「フランスパンと桜の意外な組み合わせが高揚感をよく伝えている。「にゅっと」で軽やかさ、POPさを効かせた点も上手い」

自由詠
「生きる希望に満ち溢れたステキな作品。心に深く残った作品です。きっと若い人? かな」


どの評もありがたい限りなのですが、特に嬉しかったのは自由詠でいただいた評です。
こちらの評を付けてくださったのは句歴60年以上を誇る感動律の大ベテランの方です。
句会でご一緒させていただく機会も多く、私自身大変尊敬している俳人の一人です。
その方が特選句として上記の評を付けてくださいました。
こんなに嬉しいことはありませんし、今後のモチベーションも上がります。

次回のフォーラムは秋の予定ですが、今度は無事に句会も開催でき、皆さんにお会いできることを心から楽しみにしています。


今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。

「詩客」に掲載されました

詩歌交流サイト「詩客」に拙句を十句掲載していただきました。
※URLはこちらです。
http://shiika.sakura.ne.jp/works/haiku-works/2020-06-13-20825.html

 

ライフ   さいとう こう

冬を挽くカフェの窓辺
赤いガーベラが頬杖をつく港町
君を訳する文法がない
ドイツ語のような雨を駆ける
口は唇になり通り雨
湯豆腐の冷めた肌を寄せる
「あのね、あの、、その…」春
八重歯からシロツメクサの風になり
男の昔話そのグラスにある傾き
この空になにもない鳥の円周率

 

タイトルは「ライフ」です。
十句を通じて一つの人生が浮かび上がるような、そんな構成にしてみました。

句の出来不出来は別として、どれもお気に入りの句ばかりです。


錚々たる執筆陣が名を連ねる、あの「詩客」にまさか自分の句が載るとは…。
ご推挙いただいた叶裕さま、本当にありがとうございました。

続けていればこんな素敵なご褒美があるのですね。
今夜は良いお酒が飲めそうです。

 

今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。