海紅令和二年十月号
先日届いた海紅十月号。
特に感動した句はこちらです。
たいした事もしない朝のエプロン 渥美ゆかり
→たったの17音、この一行だけでストーリーが浮かんできます。
毎朝エプロンを来て台所に立つのが作者の日課なのでしょう。
嬉しい日も悲しい日も何年何十年と毎日台所に立つ作者の背中がそこにあります。
鴨が潜り静か 笠原マヒト
→短律句が決まっています。
鴨が池に潜った後に訪れる一瞬の静寂を見事に切り取っています。
ユリの花直角に咲き話しかけ 千田光子
→直角に咲く、とはどういう状態でしょうか。
花壇の形でしょうか、あるいは作者にはそう見えたのでしょうか。
いずれにせよ何だか心持がよい、海紅俳句の美質を見たようです。
ノボタンの濃い紫だから文月 田中耕司
→「文月」が効いています。七月じゃぁないですよね。
濃い紫はやはり日本的です。「だから」に説得感があるのです。
夏草はびこる塞がれた仏の道 原鈴子
→お寺へ続く山道でしょう。
夏草がはびこり塞がれてしまった一本道。
この無常観にこそ仏の教えを感じざるを得ません。
今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。