海紅令和二年十一月号
先日届いた海紅十一月号。
特に感動した句はこちらです。
繰り返しくりかえし夏の終わり告げる波 渥美ふみ
→リフレインが効いています。
幾重にも寄せては返す波の音が心に訴えかけます、過ぎゆく夏の思い出とともに。
またしても俺の絵になつてゆく 空心菜
→句も同じでしょう。
絵も写真も句も結局は作者の魂を投影したものだと教えてくれています。
それが芸術の真理ではないでしょうか。
ぐみの実のマゼンタ昨晩の口喧嘩 杉本ゆきこ
→昨晩の口喧嘩がずっと心に引っかかっている。
ふと目にしたぐみの実の鮮やかなマゼンタが作者の胸に去来します。
そこに詩が生まれました。
独り居に眼閉じ聞く蝉しぐれ 中塚銀太
→寂しさも孤独もすべて受け入れて、独り居に眼を閉じれば響く蝉しぐれ。
過ぎゆく夏の風物詩は流れゆく心の機微を表しているようです。
ボロボロのピカチュウが笑う黒シャツ 無一
→笑う「ボロボロのピカチュウ」の何とも言えない不気味さ。
この黒シャツを着ているのは明らかに子供ではないような気さえします。
句がまとう狂気にも似たオーラに惹かれました。