海紅令和二年九月号
先日届いた海紅九月号。
私が特に感動した句はこちらです。
うつむく日の向日葵は大きい 伊藤 三枝
→俯いて歩く日、ふと気づいた向日葵の影。
見上げるといつもの向日葵がその日はやけに大きく見えたのでしょう。
向日葵のどっしりとした存在感が伝わってきました。
ごめんください吸い込む夏畳 小早川 すすむ
→「夏畳」にやられました。畳の匂いって独特ですよね。私は大好きです。
玄関に漂う和室の畳の匂いと夏の取り合わせが爽やかです。
誰の傘濡れすぎている 杉本 ゆきこ
→遠方から来た人の傘でしょうか。ただ濡れているのではなく「濡れすぎている」まで踏み込む感性。
何気ない光景の中にも詩を見つける作者の観察眼に感心してしまいます。
浴衣たたむ手首の白いとこが夏 田中 耕司
→「浴衣>たたむ>白い手首」と徐々に焦点を絞っていき、結句に「夏」とズバッと言い切ってしまう。
前半に焦点を絞り込んだことによって、結句の「夏」という広がりのある一語が活きます。
海紅の神髄を見たようです。
ツバメ弧を描き雨雲唸る 森 直弥
→上句のツバメの軽快な様子から結句の「唸る」の重々しさの対比が見事です。
意外と詠みにくい情景かと思いましたが、平明な言葉で端的に表現されており上手いと思いました。
今日のところはこの辺で。
あなたが佳き句に出会わんことを…。